逆流性食道炎が治らない原因と対策

「胸やけが続く」「喉に違和感がある」「胃酸が上がってくる感じがする」——これらは、逆流性食道炎(GERD:Gastroesophageal Reflux Disease)に悩む人がよく訴える症状です。近年は食生活の欧米化やストレス社会の影響もあり、若年層にも増加傾向にあります。
薬を飲んでも一時的にしか楽にならず、「いつまでも治らない」「再発を繰り返す」と感じている人も少なくありません。本稿では、逆流性食道炎が慢性化する原因と、その対策を現代医学と東洋医学の両面から掘り下げて考察します。

逆流性食道炎は、胃酸や消化液が食道へ逆流し、粘膜を傷つけて炎症を起こす病気です。代表的な症状は、胸やけ、呑酸(すっぱい液が上がってくる感覚)、喉の違和感、咳、声枯れなどです。

現代医学では主に以下の原因が考えられています:

* 下部食道括約筋(LES)の機能低下による胃酸の逆流
* 食道裂孔ヘルニアによる逆流の促進
* 肥満や腹圧の上昇(妊娠・便秘・猫背など)
* 食生活の乱れ(脂質・糖質・アルコール・カフェインの過剰摂取)
* ストレスや喫煙、加齢による消化機能の低下

治療の基本は、プロトンポンプ阻害薬(PPI)などの胃酸抑制薬の内服に加えて、生活習慣の指導です。しかし、薬を飲み続けても症状が再発したり、薬を減らすとすぐに悪化するケースもあります。

なぜ治らないのか——その理由として、

* 長期的に原因となる生活習慣が改善されていない
* 胃酸以外の消化液(胆汁やペプシンなど)の関与が見逃されている
* 食道以外(咽喉頭、気道、食道運動)の問題が併存している
* ストレスや自律神経の乱れが強く関与している

といった背景が挙げられます。つまり、「胃酸だけを抑えれば治る」という考え方では、限界があるのです。

東洋医学では、逆流性食道炎のような症状は「嘔逆(おうぎゃく)」や「噎膈(いっかく)」「胃気上逆」などと表現されます。その本質は、「胃の気が下に降りず、上へと逆流する状態」とされており、気の流れ、脾胃(ひい)の弱り、肝の緊張、痰湿(たんしつ)の停滞などが関係していると考えます。

主な体質タイプと原因

1. **肝胃不和型(かんいふわ)**
ストレスや情緒の乱れで「肝(自律神経系)」の気が滞り、胃の働きを妨げるタイプ。ストレス性胃痛や緊張によるげっぷ、吐き気を伴いやすい。

2. **脾胃虚弱型(ひいきょじゃく)**
胃腸がもともと弱く、消化吸収が低下しているタイプ。食べ過ぎや疲労、冷えで悪化しやすく、げっぷや膨満感がある。

3. **胃熱上逆型(いねつじょうぎゃく)**
辛い物やアルコール、脂っこい食事によって胃に熱がこもり、気が上昇するタイプ。胸焼け・口臭・口の渇きなどを伴う。

4. **痰湿停滞型(たんしつていたい)**
体に余分な「湿(余剰水分)」や「痰(老廃物)」がたまり、胃の動きを妨げて逆流が起きるタイプ。舌が白くむくみ、食後に重だるくなる傾向がある。

東洋医学的な対策:整える・巡らせる・下げる

東洋医学では、「胃の気を下げる」「気の巡りを整える」「脾胃を強める」ことを目的として、鍼灸・漢方・食養生などを組み合わせた体質改善を行います。

鍼灸治療では、「内関(ないかん)」「足三里(あしさんり)」「中脘(ちゅうかん)」「太衝(たいしょう)」などを用い、消化機能と自律神経の調整を図ります。

色彩治療ではまず内臓と脳の気の乱れを比較して、症状が重い方から施術していきます。ストレスや自律神経の乱れが原因の場合は脳の循環や自律神経のバランスを整えることで胃腸の働きを良好にしていきます。
漢方薬は体質に応じて処方されます。例えば、肝胃不和型には「半夏瀉心湯」「柴胡疎肝湯」、胃熱型には「黄連解毒湯」、脾胃虚弱型には「六君子湯」などが使用されます。
食事指導としては、よく噛んでゆっくり食べること、冷たい物・脂っこい物・生もの・刺激物の摂取を控えることが推奨されます。また、食後すぐに横にならないことも重要です。

東洋医学では、単に「症状を抑える」ことではなく、「なぜその症状が現れたのか」を全身のバランスから捉え、整えていくことを重視します。

現代医学と東洋医学の統合的アプローチが鍵

逆流性食道炎に対し、現代医学は急性期の強い症状のコントロールに非常に有効です。一方で、慢性化や再発を防ぐには、体質・食習慣・ストレス・自律神経といった多面的な要因を整える東洋医学や色彩治療の知恵が力を発揮します。

たとえば、「薬で胃酸を抑えつつ、鍼灸でストレスと自律神経を整える」「PPIを漸減しながら、漢方薬で胃腸を強くしていく」といったハイブリッドな対応が、長期的には薬を手放す第一歩になります。

おわりに

逆流性食道炎は、薬だけでコントロールしきれない慢性病の一つです。だからこそ、食生活・生活リズム・感情のコントロールなど、自分自身の生活全体を見直すことが重要です。そして、現代医学の技術と東洋医学の体質観をうまく組み合わせることで、「治らない」と感じていた症状にも新しい可能性が生まれるはずです。

著作者紹介

保田宏一、1960年生

1985年東京都立大学工学部工業化学科卒業。同年凸版印刷株式会社中央研究所入社、1988年東京工業大学院総合理工学研究科電子化学専攻山崎研究室に2年間国内留学。1991年ソニー株式会社総合研究所入社。以降光ディスクの研究開発に携わりブルーレイディスクの記録膜を開発した。1999年伯父の加島春来が色彩治療を開発した。色彩治療について研究するための医学知識を得るべく花田学園日本鍼灸理療専門学校にエンジニアをしながら3年間夜学に通い、2002年鍼灸師資格取得。2014年ブルーレイディスク研究開発終了したので、色彩治療の研究をするため青山色彩鍼灸院開院、現在に至る。趣味はエレキギター演奏で自称おしゃれなフュージョンギタリスト。

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